指導医
小玉 祐介
入職:2003年
日本救急医医学会救急科専門医
先生の研修医時代のお話を聞かせてください。
苦労したこと、良かったこと等
・苦労したこと:初めての癌患者さんです。肝臓癌で腹水、遠隔転移があり終末期の状態緩和ケア以外にできる医療はほとんどない状態でした。頭では理解していましたが、何もしないことに対して無力感、罪悪感がありました。良い方法が自分の力で思いつくはずがないのに悩んだり、調べたり、担当看護師と夜中まで話し合ったりしました。いろいろ行いましたが、患者さんに対する医療行為は当初から予定していた緩和ケアのみで何も変化しませんでした。さらに振り返ってみると、当時は自分の無力感をごまかすために苦労したふりをしていただけだろうと思われ、よりつらい思い出です。
・良かったこと:受け持った患者さんが元気に退院されるときはいつも嬉しくなります。同期にも恵まれ、研修に組み込まれている定期的な振り返りの他に他職種を交えての月1回の誕生日会や他病院の同期と合同での温泉旅行、スキー旅行などを行い、辛いことや楽しいことも共有できたことは良い思い出です。
初期研修において、印象に残る診療科・研修内容はありますか?
外科、虫垂炎手術の執刀です。指導医が助手となって執刀しました。優秀すぎる助手がどんどん進めていくのですが、自分が執刀したという気分になれるのが気持ちよかったです。
救急科を選ばれたのは、どうしてですか?
また、そのきっかけなどをお聞かせください。
初期研修の体制が不十分で苦労しました。そこで、自分が上手に指導できるように研修指導医を目指しました。研修指導医になるためには幅広い知識が必要と考え、後期研修では総合内科を目標に臓器別ローテートを行いました。
後期研修をしている時に週1-2回の救急外来や当直を行っていたのですが、当時の救急外来のレベル・システムに問題があると感じるようになりました。そこで、同期や近い世代の先生たち、救急外来の看護師と一緒に救急外来を立て直そうと学習会、症例検討会を始めました。そうこうしているうちに総合内科より救急に惹かれるようになりました。同時に、研修指導として救急外来は非常に重要な領域であることも実感しました。その後、救急外来を本格的に立て直すこと、救急外来での研修教育のレベルを上げることを目標に福井大学救急部で外部研修を行い、救急科を立ち上げました。現在も初心を忘れずによりよい救急医療を行うよう頑張っています。
指導する立場として、心がけていらっしゃることはなんですか?
感情をぶつけないことを目標としています。それでも忙しい時には、感情をぶつけてしまうことはあるものです。きつく指導・注意した時には、家に帰ってから他の言い方があったのではないか、そこまで言う必要がなかったのではないか、自分の怒りをぶつけただけではないのかと悩み眠れなくなることがあります。
しかし、人が人を指導するのであれば、指導する立場の方が指導される研修医よりも常に悩むのがちょうど良いものと思っています。今後もより良い指導ができるように悩んでいたいです。
当科専門研修プログラムのポイントは、どんなことですか。
ER型救急です。
医師を続ける限り何科を専攻しても必要なスキルを学ぶ場所です。2年間の研修を行えば、専門医に繋ぐまでのひと通りの初期対応が自信を持ってできるようになります。
これから研修先を決める学生にメッセージをお願いします。
初期研修時にしか身につかないこと、初期研修時に身につけておかないと苦労することがあります。
それは、患者さん・ご家族への接し方、他職種とのコミュニケーションなど社会人として一般的なものや、専攻する科を決めてからでは学びにくい幅広い総合力などが当たります。これらを学べる病院を研修先として選んでください。
もちろん、当院でも行動科学の学習会、SEAの振り返り、総合内科、救急科の定期的な学習会などを行いこれらが学べる環境にしています。